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平野 愛

平野 愛/写真家

その日の記憶を文字だけでなく写真と一緒に残せたらどれだけ素敵だろうか。 身の回りの「残像」を積み重ねていく楽しさを書きとめていきます。

第20回 本屋と写真家のmoving days

 一町移動するだけでも大騒ぎだったわたしなのに、こんなに移動する7ケ月は人生で初めてだった。

 6つの引っ越しに密着した写真集『moving days』を抱えての旅が、あれよあれよという間に全国5都市を巡っていま大阪の[Calo Bookshop & Cafe]で最終回を迎えている。なぜ最終回なのかと言うと、重版なしの500部限定で作った写真集そのものの在庫がもうなくなりそうなのだ。

 京都の[誠光社]からスタートした同名の写真展。その後、松本[栞日 sioribi]、広島[READAN DEAT(リーダンディート)]、名古屋[ON READING]、東京[Title]へと展示そのものを引っ越していった。“独立系本屋”と呼ばれる、新しい形の本屋さんのギャラリースペースでの展示と同時に写真集を販売していくスタイルは、想像以上に心地良かった。幸せだった。

 思い返すたびに、どの場所にも戻りたいと思ってしまう。見渡す限り本があって、そっと音楽が流れていて、珈琲の匂いがして、静かに店主が座って作業している。そんな風景だけでも何時間でも見ていられる。空間にある全要素が自分の好きなものの上に、自分の写真が、いや自分自身がそこに居候しているような状況は、あまりにも贅沢だったのだ。ひとり暮らしの経験も、引っ越し経験もほとんどないわたしには、憧れがほのかに現実となったような日々だった。

 そんな日々を、最終回の展示では「My“moving days”」として展示自体の引っ越し記録を写真と言葉でまとめることにした。広島[READAN DEAT]の店主・清政さんは「展示するたびに関わる人が増えていく不思議な写真展」と言ってくださっていたのが、今なんとなく分かるような気がする。それがどんなものかの断片を、展示写真とテキストで少し見ていただこう。

2018 March 京都[誠光社]展示15日目より
2018 March 京都[誠光社]展示15日目より
 「信じられない。庭の椿の花が咲いて散る間に、写真集は100冊以上も売れてしまった。わたしはと言えば、堀部さんと美奈子さんと毎日なんでもない話をして、珈琲を飲んで、ただ楽しく来てくださる方と笑っていただけなのに。」

2018 June 松本[栞日 sioribi]展示1日目より
2018 June 松本[栞日 sioribi]展示1日目より
 「一階でフォトワークショップ。店主の菊地さんも一緒に店内を見つめていく。(中略)1時間が2時間くらいに感じる、特別な時間がここには流れているようだった。」

2018 July 広島[READAN DEAT]展示15日目~16日目より
2018 July 広島[READAN DEAT]展示15日目~16日目より
 「トークイベントは超満席。連日の猛暑。店主の清政さんは、業務用扇風機をご近所から借りてきてくださったりした。(中略)酸欠。夜、久しぶりに足がつった。終わっていくのが、寂しい。」

2018 August 東京[Title]展示1日目より
2018 August 東京[Title]展示1日目より
 「名古屋からそのまま東京へ来て、今度は8時間も設営にかかり途中の風景は1枚も撮っていなかった。意識しなければ撮れないものなのだ。そして、開店。店主の辻山さんが、子ども雑誌に付録を入れて紐で結んでいかれる作業を眺めていた。」

2018 September 名古屋[ON READING]展示17日目より
2018 September 名古屋[ON READING]展示17日目より
 「東京での日々をまたぐように、名古屋の日々も続いていた。写真集が売り切れて、宅急便では間に合わずスーツケースに12冊詰め込んで追加納品。(中略)満ち満ちた。また終わっていく。そしてはじまる。最後の街、大阪へ。」

 こんなふうにしてわたしは各地の居候先でたくさんの風景と物語に触れてきた。その風景は、この20倍くらいの枚数で、展示している。もし目撃してもらえたらきっと面白がってもらえるに違いない。

 加えて、各地に設置していた芳名帳に集まった400名を越える「みんなの引っ越し歴」もまとめることができた。[Calo Bookshop & Cafe]の店主・石川さんは「読み応え十分の写真展」と言ってくださった。こんな表現、滅多に出てこないんじゃないかな。面白いな。石川さんは写真よりむしろここをずっと眺めておられた。嬉しかった。だってみんなが書いてくださったものだから。

 最後にひとつ、ご報告したいことがある。それは、5都市を巡って出会った方々の中に、なんとこの住ムフムラボコラムの読者の多かったこと。名古屋の[ON READING]で開催したワークショップには、わざわざ東京から深夜バスに乗って参加してくださった方までいらした。東京の[Title]で展示をした際には、茨城から電車を乗り継いで会いに来てくださった方も。他にもたくさん書ききれないくらいの方々が来てくださった。

 5年前に連載をはじめさせて頂いてから、読者のみなさんと会うチャンスはいくつか経験させて頂いたけれど、さすがに他県で出会うことはなかった。書き続けること、想い続けること、の素晴らしさを教えてもらったように思う。本当に嬉しかった。

 あと25日間の日々をただただ大切に過ごしたい。最終日の10/27(土)にはファイナルトークとして、まさにここのタイトルと同じ「本屋と写真家のmoving days」と題して、京都[誠光社]の店主・堀部篤史さんと編集者の竹内厚さんを招いて、さらに裏側に迫るお話をしたいと思っている。またぜひ、読者のみなさんにもお会いしたい。

 終わっていく寂しさで、また涙が出そうだな。
 どうか我慢できますように。


moving days in Calo Bookshop & Cafe
会期:10月2日(火)~27日(土)
※10/8(月/祝)は18時まで営業。最終日は17時まで。
場所:Calo Bookshop & Cafe
大阪市西区江戸堀1-8-24 若狭ビル5階
12:00~19:00(土曜は~18:00) 毎週日・月曜休
http://www.calobookshop.com

//CROSS TALK//「本屋と写真家のmoving days」
日時:10月27日(土) 18:00~19:30
参加費:1,500円(1ドリンク付)
定員:25名(要予約)
ホスト:平野愛
ゲスト:竹内厚(編集者)・堀部篤史(誠光社店主)
予約方法:お申し込みはメールでinfo@calobookshop.comまで、イベント名とご予約の方全員のお名前と代表の方のお電話番号を添えてお申し込みください。折り返しご連絡します。

在廊予定日などはこちらにて随時更新中
http://photoandcolors.jp/calo/

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