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いきかたのカタチ

街的わが家〜アート・音楽・グルメ

江 弘毅

江 弘毅(編集者)
住まいと街の健全な「交通」が行われてこそ人がハッピーになる、
という街的生活者の住生活充実コラム。今日も「ごきげんなネタ」てんこ盛りで。

いきかたのカタチ

街的わが家〜アート・音楽・グルメ

第11回 「○×屋さん」で買おう

 スーパーやデパ地下ではなく、肉は精肉店で、魚は鮮魚店、パンはパン屋で買うことの面白さを実感している。日常生活の調子がよくなるというか。

 確かに大型スーパーに行くと便利で、例えばカキフライをつくるにしろ、パン粉や卵からメインのカキ、出来上がりに絞るレモンまで一発で揃う。白ワインだって売場に行けば2,500円ぐらいのシャブリから800円ぐらいのスペインワインまで過不足なく選べる。
 
 けれども「今日の夜はトンカツだ」となって、豚肉の売場に行ったとしよう。 
 そこでパックに貼られたラベルの「○×清浄豚 背ローストンカツ用 250g568円」というのと「○×産豚ロース 280g 586円」というのをまるでにらめっこするように見て選ぶ。こっちの6個346円か10個422円にしようか卵を買うときのように、実際に「賢い主婦状態」になって悩んだりもする。

 そういうのより、肉屋さんに行って「トンカツしたいんですけど、これとこれどう違うんですか」とひとこと訊く。すると「トンカツやったらこっちのほうがうまいよ、ちょっとだけ高いけど」と言ってくれるだろう。

 ちなみに、住居の近くにものすごいお洒落な肉屋さんが出来て、そこはステーキとかのイートインも可能でエラい人気だ(あまり関係ない話だけど)。

 わたしがよく行く魚屋さんのご夫婦は、その店が休みの日曜日、その魚屋の向かいのこれまたよく行くお好み焼き屋さんでご一緒になったりする。たまたまそういうこともあって顔見知りなのだが、そうなると何だか「信頼」とか「安心」といったものが出来てくる。

 その魚屋さんはいつも行くスーパーと同じ通りにあって、歩いて30歩の距離だったが、たまに友人が酒を飲みに来る時に、いい鮪の造りを食わせてやろうと買うぐらいで、「お、うまそうなアサリやなあ」と前を通ることがあっても、すでにスーパーでフライパンで焼くだけのハンバーグを買っていたりするので、ほとんど行くことがなかった。

 そのお好み焼き屋さんで「あっ」と思ったのは、いつも食べているお好み焼きの前に食べるイカゲソのバター焼きのゲソも、お好み焼きや焼きそばに入れるイカも、その魚屋さんから入れているということを知ったからだ。
 加えて魚屋の大将は、元々自分の店のイカゲソを食べてビールを飲んでいるのだった。

 魚屋さんだからゲソのバター焼きぐらい、自分とこの一番おいしいのを選んでフライパンで焼いて食べたらいいのに。ビールなんて中身一緒やし。
 そういうふうに思ったのと同時に、この魚屋さん絶対イケてるなあ、と確信したのだ。

 その時から魚介を買う場合、スーパーの前にまず魚屋さんを覗くことになった。そうなると、ものすごいうまそうなアサリだから今日はボンゴレにしよう、というようになった。もちろんハンバーグはやんぴである。



 魚屋さんでは、スーパーやデパ地下に出ている「大間産まぐろ」「香住漁港のカニ」のような「情報化されたラベル」に書いていないものが手に入る。それはもちろん「うまいもの」というものであることはまちがいない。
 なぜならその魚屋さんに行くようになって、冬はナマコを見つけて値段を聞いて「おっ、安いやん」と買ったり、「酢牡蠣でイケる牡蠣ちょうだい」とか、そういうことになったからだ。たまにまけてくれるし。

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いきかたのカタチ

江 弘毅
編集者

1958年岸和田生まれの岸和田育ち。神戸大学農学部園芸農学科卒。京阪神エルマガジン社時代に雑誌『Meets Regional』の創刊に関わり、12年間編集長に。2006年4月より編集集団140B取締役編集責任者。著書に『岸和田だんじり祭 だんじり若頭日記』(晶文社)、『「街的」ということ』(講談社現代新書)、『ミーツへの道』(本の雑誌社)、『「うまいもん屋」からの大阪論』(NHK出版新書)、『飲み食い世界一の大阪』(ミシマ社)、『有次と庖丁』(新潮社)など。毎日新聞夕刊に「濃い味、うす味、街のあじ。」(毎月第4火曜)を連載。

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