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いきかたのカタチ

街的わが家〜アート・音楽・グルメ

江 弘毅

江 弘毅(編集者)
住まいと街の健全な「交通」が行われてこそ人がハッピーになる、
という街的生活者の住生活充実コラム。今日も「ごきげんなネタ」てんこ盛りで。

いきかたのカタチ

街的わが家〜アート・音楽・グルメ

第12回 揚げ物考

 5年前にキッチンを改装してから、食生活が劇的に変わったことがある。
 とくに20年以上使っていたガスコンロを最新型に変えたことによって、揚げ物がやりやすくなった。
 まず道具から入れ、はここでも真である。

 天ぷらやコロッケは難しい料理だと思っていた。
 というか、揚げ物をやるとなると小麦粉や溶き卵を用意して、さらにパン粉をつけたりするのが邪魔くさいとか、キッチンが油で汚れてしまったりするから敬遠がちで、鶏の唐揚げにしろトンカツにしろ、スーパーやデパ地下で買って帰っていた。
 
 けれども昔と違って今のガスコンロは、180℃なら180℃と温度設定がやりやすく、たとえばトンカツにしろエビフライにしろ、衣をつけることさえうまくいけば間違いなく揚がる。
 冷凍物なら(いっぺんにたくさん鍋に入れなければ)まず失敗はない。冷凍のミンチカツでも串カツセットでも、やはり揚げたてはおいしい。
 そしてこれからの季節、なによりもビールだ。

 それまではたとえば、ちくわをスーパーで見つけても、そのままワサビ醤油で食べるかおでんに入れるかしか思い浮かばなかったが、天ぷら粉に青ノリを混ぜ込んで磯辺揚げにしたり、チーズを詰めて揚げたりと、一気に料理の種類が増える。

 そうか、「煮る」「焼く」に加えて「揚げる」ということがプラスされるだけで、こんなに「うまいもの」が増えるんだ、と実感した。
 ビールだけでなく、カキフライで白ワインというように家で健全に飲むことが多くなったし。

 このところよくやる魚の素揚げが圧巻だ。
 前回の「『○×屋さん』で買おう」ではないが、良いカレイやガシラメバルを魚屋で見つけたら、「素揚げにしたい」といえばうろこや内臓を取ってくれる。

 買って帰ってそのまま、表面の水分をしっかりふき取って、そのまま鍋にぶち込んで160℃ぐらいの温度でしっかり揚げるだけ。
 小ぶりなガシラメバルなら、背びれのところから庖丁で両側から少し開き、二度揚げすれば骨まで食べられる。
 ひと手間かけて、ビニール袋に入れた片栗粉を魚にまぶすとなおよし。

 などと、男の料理教室みたいになってきたが、自分周りの友人に聞いても料理といえばたらこを買って帰って炙って酒のツマミにするだけのレパートリーの男はいわずもがな、休日の昼などチャーハンやだし巻きも奥さんの手を煩わせることなしによろしくやっている者まで、「揚げ物」に対してのある種のネガティブな思い込みがあるようだ。

 けれども「揚げ物」が一枚加わるだけで、がらっと「普段の食べ物」についての発想が変わる。
 今まで思いもつかなかったが、魚を見て「素揚げしてやろう」などと思えるようになったのは、大きな収穫だ。

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いきかたのカタチ

江 弘毅
編集者

1958年岸和田生まれの岸和田育ち。神戸大学農学部園芸農学科卒。京阪神エルマガジン社時代に雑誌『Meets Regional』の創刊に関わり、12年間編集長に。2006年4月より編集集団140B取締役編集責任者。著書に『岸和田だんじり祭 だんじり若頭日記』(晶文社)、『「街的」ということ』(講談社現代新書)、『ミーツへの道』(本の雑誌社)、『「うまいもん屋」からの大阪論』(NHK出版新書)、『飲み食い世界一の大阪』(ミシマ社)、『有次と庖丁』(新潮社)など。毎日新聞夕刊に「濃い味、うす味、街のあじ。」(毎月第4火曜)を連載。

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