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いきかたのカタチ

街的わが家〜アート・音楽・グルメ

江 弘毅

江 弘毅(編集者)
住まいと街の健全な「交通」が行われてこそ人がハッピーになる、
という街的生活者の住生活充実コラム。今日も「ごきげんなネタ」てんこ盛りで。

いきかたのカタチ

街的わが家〜アート・音楽・グルメ

第13回 出前とお持ち帰り

 日曜日の昼に大阪市内の友人の家へ行くことになった。
 当然、酒が入ることだろう。なので白ワイン1本をぶら下げていった。
まずはその家の冷蔵庫にある缶ビールをあけ、ソーセージやチーズなども出てくる。持っていったワインも抜いて空けてしまい、ウイスキーの水割りも。
 2時間ぐらい飲んで話して、友人は「酒、あったはずや」と日本酒の一升瓶を持ってくる。

「鮨でも取ろか」
「おお、悪いなあ」
 となり、友人は電話で「盛り合わせ、3人前」と出前を取った。  
 ほろ酔い加減の頃に、鮨屋が出前で桶を持ってきた。
 おお、これはエエ鮨や。ピザのチェーン店の「宅配」的な感じではなく、正真正銘の街場の鮨屋の鮨だ。

「払ろとくわ」と2千円渡す。気心知れた旧い友人は「はいよ」と受け取る。
 全く気というものを遣わせないところが良い。家の手料理、とりわけ奥さんが前の日から買い出しに行って、皿や食器を用意して、あれこれ調理して振る舞う、というのはやはり気を遣うものだ。後片付けも大変だろう。
 
 その点、出前は余計な気遣いはない。
「これうまいなあ、ええなあ」で酒がススムというものだ。

 夕食まで食べて帰るわけにはいかないので、5時前に「ごっつおさんな。ほなまた」と言って出る。
 帰りの電車の中で、鮨だの中華だの、そういう出前を取れる環境はつくづくいいものだ、と思う。
 商店街の店舗兼住居で育った小中学生の頃を思い出す。
 夏休みなど学校に行かずに家にいた時、午前中に取引先の人が来て商談を済ます頃に、父親が「昼、食べて帰りいな。天ぷらうどん取ったろ」と近所の[たこ治]という名のうどん屋に電話するシーンをずっと見てきたことを懐かしく思い出す。
 ついでに「お前は何食べるんや」「親子丼ときつね」みたいなうれしいことも多々あった。

 もう40年以上も前の話だが、ほんまに[たこ治]のうどんや丼はうまかった。客のために飲食店から食べ物の出前を頼んだり、近所の喫茶店からホットコーヒーをとったりできる環境は、街場で自転車に乗った出前の「岡持ち」姿を見かけることがないのと同様に、もはや旧い商店街や下町以外にしか見あたらなくなったが、その街ならではの味わいがあった。
 けれども飲食店の「お持ち帰り」は今も健在であり有効である。
 わたしは毎月1回の例会がある、とある麻雀の会をやっていて、昼から夜9時ぐらいまで知人宅で卓を囲むのだが、そこのルールに「酒類と食べ物を各自持ち寄ること」というのがある。

「鰻」の字が大きく入ったこの包装紙からすでにうまいと感じる。北浜[阿み彦]

 これも「お互い気を遣わない」というのが、当然ベースにある。
 持ち寄る食べ物は、各メンバーの近所の鮨屋の巻き寿司やいなり、肉屋のコロッケとか、途中の駅前商店街にある焼きたてパンとか、市場のたこ焼きまでさまざまで、なかなかどれもうまくて楽しい。

 わたしの最寄りの駅前に創業70年という中華料理屋さんがあって、そこのシュウマイを持っていったところ好評を博し、以来メンバーが楽しみにしてくれている。

「元町[四興樓]のシュウマイ。豚ミンチの脂とタマネギが醸し出す濃い味を思い出すだけで……

 そのような「お持ち帰り」の「持ち寄り」は、ファストフード店「テイクアウト」というニュアンスでもないし、デパ地下の「おもたせ」という大層なものでない。

 それぞれの街の「近所の店のお持ち帰りネットワーク」で、飲み会食べ会を場所を替え、趣向を変え、やってみるのも街歩きのように楽しいかもしれない。

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いきかたのカタチ

江 弘毅
編集者

1958年岸和田生まれの岸和田育ち。神戸大学農学部園芸農学科卒。京阪神エルマガジン社時代に雑誌『Meets Regional』の創刊に関わり、12年間編集長に。2006年4月より編集集団140B取締役編集責任者。著書に『岸和田だんじり祭 だんじり若頭日記』(晶文社)、『「街的」ということ』(講談社現代新書)、『ミーツへの道』(本の雑誌社)、『「うまいもん屋」からの大阪論』(NHK出版新書)、『飲み食い世界一の大阪』(ミシマ社)、『有次と庖丁』(新潮社)など。毎日新聞夕刊に「濃い味、うす味、街のあじ。」(毎月第4火曜)を連載。

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