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かぞくのカタチ

動物という家族

小林明子

小林明子(ライター)
物心ついた時から家には動物がいて、ペットというより「家族」だった。
一緒に暮らすのは大変だけど、意外な発見の連続で離れられなくなる。

かぞくのカタチ

動物という家族

第15回 どこまでも親バカ〜シャンコに貢いだグッズの数々

 先月のこと。一泊二日ならまだしも、二泊三日や三泊四日の出張が続くことがわかり、その間の面倒をどうしようかという思いで頭がいっぱいになった。もちろん、大学1年生の息子のことではない。愛するシャンコの面倒である。

 息子に頼んでおけば、エサや水の補充はしてくれるだろうが、何せ大学にアルバイトに忙しい身。もし、忘れられたら……大問題だ。そこで、いつものように、仕事の合間にネット検索。ほどなく猫用の「自動給水器」を発見する。
 濾過用のフィルター付きだから水にホコリが混じることもなく、数日ならば便利に使えそうだ。エサはドライフードだから、丼鉢にでも山盛りしておけばOK。トイレは2個用意して……と、安堵した矢先、「来週、えらい寒なるらしいで」と息子が教えてくれた。

 元来、そもそも体温が高いのか猫は寒さには強い。我が家の裏にある空き家に住みついている野良猫は、雪がちらつくような寒い日でも、薄日が当たる屋根の庇部分で、時々向きを変えながら毛づくろいなどをしている。その様子をシャンコと見比べながら、「あんたは暖かい部屋に居られて、毎日のご飯の心配もせんでええなぁ。一歩まちごうたら、あんたもああなったんやしなぁ」と話しかけるのだ。

 とはいえ、火の気のない寒々しい部屋で「にゃーん」と泣きながら寒さに震えているシャンコを出張先で想像するだけで、心配でたまらなくなるに決まっている。気もそぞろになり、仕事どころではなくなるかもしれない。それは一大事だ。

 先シーズンまでは、大きめの段ボール箱に毛足の長い毛布を敷き詰め、ペット用ホットカーペットを毛布の下にしのばせて暖が取れるようにしてきた。ただそれでは、毛布に接する部分は温かいが、接していない半身は冷え冷え。シャンコも寒いのか、時々寝返りを打つ様子を見つつ、次の冬には15歳(人間に換算すると76歳)にもなることだし、何とかせねばと思っていたところだった。

 またまたネット検索するも、カーペット状の器具はあるものの、身体全体を温めてくれる物は見当たらない。人間用のコタツをつけっぱなしにしていくのも不安だし…。ン? コタツ?「コタツ 猫」と入力してみたところ、あったのです!小動物用のコタツが。

 こたつ本体は約33×45センチ、高さ30センチ。ふわふわの専用マットと掛け布団がついている。それらはヒモで本体に括りつける仕様になっているため、カバー&マットと本体がとっちらかることもない。
「赤外線ランプを使っていないので、目にも安心。ヒーター部分が毛皮にふれないように、保護網がついている。中に入って良し、天板部分も温かいので乗って良し」とのセールス文句にたちまちノックアウト。約1万円と少々お高い買い物だったが「私の仕事の原動力である、愛するシャンコの為」といういつもの題目の元、「カゴに入れる」ボタンをクリック。ほどなく商品が届いた。

 程よいサイズ感、ほんわか温かいという程度の温度。コード部分も噛んでも大丈夫なよう、頑丈に作られている。シャンコも「これ、なんなん?」と興味津々。半ば無理矢理に中に入れると、その日はまだそんなに寒くはなかったので、「ふーん」てな顔ですぐに出てきたけれども、夜になって気温が下がると、この中は温かいと気づいたよう。自ら入り、ぐっすり寝てくれるようになった。

 問題点が2つ。人間用のコタツは重みがあるので、掛け布団を鼻でぐい~ッと押しながら入っていくのだが、猫用のコタツは軽いせいか、鼻で押すとコタツ自体が動いてしまい、どうもうまく開けられない。すぐあきらめてスゴスゴと帰ってくるので、仕方なく常に隅がめくれている状態になるよう、安全ピンで留めている。この状態では暖気は逃げていくばかりなので、厳冬期までに、何とか訓練したいと思っている。

 もう一つは、せっかく温かい天板の存在に気付かないのか、はたまた30センチの高さにジャンプして乗るのが億劫なのか、自ら乗ろうとはしないことだ。どうしたものかと思っていたところ、気になる記事が目についた。

 獣医さんが書いておられたのだが、要約すると「猫がスヤスヤと寝ているからといって、そのまま寝かせておいてはいけません。特に年をとった猫は。脳を活性化させるためにも、一日中寝かしておくのではなく、なでてやるなどスキンシップを積極的にとってあげてください」と。

 ガーン。今日の今まで、大人しく寝ているシャンコにちょっかいを出して遊ぼうとする息子を「せっかく寝てる子を起こしなや」と制し、諫めてきた私の行為は何だったのか。シャンコのためを思ってのことだったが、それが彼女の老化を助長させるものだったとは……。ごめんね~~、シャンコ。

 そこで、またまたネット検索する。探したかったのは「キャットタワー」である。私の部屋の窓は、ずいぶん前のことなので詳細は忘れたが、採光量を確保しなければならない建築法を守ろうと頑張ったゼネコン(自宅を建てたのは、ふだん橋や道路を造っている、結構大きめの建設会社)さんの主張で、やたらと窓の位置が高い。床から1メートル20センチの位置に窓があるので、シャンコが外を見たそうにした時は、窓枠にわざわざ乗せてやっていた。

 若かりし頃は、窓枠をひょいひょいと歩き、飽きたらその高さをモノともせず、スタッと床に降り立っていたが、近年はそうも行かず。窓枠から落ちそうになるわ、床に降りることができず、ギャーギャー鳴いて私を呼びつけるようになってきた。

 ゆえに、キャットタワーがあれば、留守の時でも好きに窓越しの風景が楽しめるし、少しは運動になるだろう。寝てばかりよりは脳の活性化につながると考えたのだ。しかし、何度も言うが、おばあちゃん猫だから、よくあるタイプのキャットタワーでは安定感が心もとない。ちっとやそっとでは倒れないような頑丈なタイプはないものかと検索したところ、ネット通販はすごい。発見しました。

 奥会津産天然杉100%、接着剤は天然ニカワ、どっしりした安定感がある4段タワーで、一番広い下の段は幅84センチ×奥行35センチあり、ゆったり寝そべれる。高さもちょうど我が家の窓の高さにぴったりで、最上段には縁があり、寝ることもできそう。2万円近い価格ではあったが、私が毎日仕事できるのはシャンコのおかげ。迷わず「カゴに入れる」をクリックした。

 10日ほどして届いたキャットタワーは思った通りの物だった。やわらかい杉の木は爪とぎにもぴったり。人間が乗ってもびくともしない堅牢な造りで、脚立にも使えそうだった。ところが問題が発生。シャンコ一人では段に飛び移ることができなかったのだ。

 実は、購入した商品の一段ごとの高さは30数センチだった。購入前に問い合わせてみたところ、特注すれば、低くも高くもできると言われたのだが、納期は1か月以上先になるとのこと。
 とにかく私は気が短い。50歳半ばも過ぎれば1か月後はどうなっているかわからない。ひつこいようだがシャンコも若くない。価格も割り増しになるので特注はあきらめ、既成サイズでオーダーしたのだった。幼い頃から耳にタコができるほど言われてきた「あわてる●●はもらいが少ない」が頭の中を駆け巡る。

 ともあれ、モノ自体は気に入ってくれたようだ。最上段に乗せると、件の野良猫が屋根を歩く様子も見えるし、比叡山も見える。となりの窓も開け放てば遠~くにだが京都タワーも見える。カラスが羽ばたく様子に目を丸くし、スズメが集団で飛び降りた時にはモンドリ打つほど驚き……。熟睡するほどくつろげるようではない様子だが、そこそこは楽しんでくれていた。

 ほどなく、最上段から次の段へ、そしてその横にある私のベッドへ、自力で降りられるようにもなった。「シャンコ、すご~い!最近は階段降りるのも億劫そうやったのに……やればできるんやね~。ちょっと若返ったん違う?お母さんは嬉しいよ」とシャンコを抱きしめる。その横から注がれる息子の冷ややかな眼なんて、気にも留めずに。

 2週間がたち、キャットタワーの最上段はシャンコのお気に入り場所になった。朝に夕に、時には夜でも、最上段から近所を見渡し、パトロールよろしく異変がないかチェックするのが習慣になったらしい。けれども相変わらず、自力で上ることはできず……。
 上りたくなった時は、踏み台が横づけてあるので簡単に乗れるベッドと同じ高さの段に乗り移り、「にゃ~~~(上の段に乗せて~)」とお呼びになる。呼びつけられた私は仕事の手を止め、「ハイハイ、乗りたいのね」とワガママなお嬢様ならぬお婆様を抱えて最上段に乗せてやる。私が留守の時はできないけど許してね、と心で謝りながら。

「にゃーん(苦しゅうない)」の声が聞けてうれしい私は、完全な親バカ。コタツの横にも踏み台をおいてやれば、自力で上れるかも……とつぶやく横で、息子「甘やかしすぎちゃう?オレは結構ほったらかしで育てられたけどな」。鋭い指摘に苦笑いするばかり。

アタシには一段ずつが高いのよね~。

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かぞくのカタチ

小林明子
ライター

1962年京都市生まれ。同志社大学在学中からミニコミ誌の制作を始めて以降、ライター稼業まっしぐら。雑誌『あまから手帖』の連載ほか、『文藝春秋』『家庭画報』などに執筆。著書に、生家である白生地問屋での少女時代を綴った昭和の風景満載のコミックエッセイ『せやし だし巻 京そだち』(原作/140B)がある。

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