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かぞくのカタチ

動物という家族

小林明子

小林明子(ライター)
物心ついた時から家には動物がいて、ペットというより「家族」だった。
一緒に暮らすのは大変だけど、意外な発見の連続で離れられなくなる。

かぞくのカタチ

動物という家族

第16回 猫好きの猫談義

 犬同様、猫にも様々な種類がある。一説によると100種以上だそうで、長毛種や短毛種、垂れ耳が特徴だったり、鼻がつぶれていたり……。犬と異なる点は、体の大きさがそう変わらないことだろうか。スレンダーなタイプ、でっぷり型など、多少の体重差はあるが、多くが抱きかかえられる大きさだ。

 けれども、その性格は1匹1匹驚くほど違う。またそれが猫と暮らす者にとってはたまらなく可愛く、だからこそ猫好き同士が顔を合わせると、“猫談義”が始まるのである。


編集者A嬢と暮らす、華ちゃんと風ちゃん
 この春、19歳になる華ちゃんがA嬢と会ったのは、彼女が大学4年生だった時。その時の華ちゃんは、手のひらに乗るサイズの子猫だった。一度目は「どこかの飼い猫かも」と思い、ミルクだけを置いて立ち去った。3日後、再会した時、華ちゃんが「ニャー」とすり寄ってきたため、捨て猫であることを確認して我が家に連れ帰った。

 それから十数年。ある日、乳首の横にシコリがあることに気づく。獣医さんに診せると、乳がんかもしれないと言われる。しかも、猫の乳腺は胴に沿って縦にあるので、前脚の付け根からモモの辺りまでを開腹して病巣部を切除しなければならないとも……。

「すでにおばあちゃん猫だったので、手術するかどうか悩みました。全身麻酔するだけでもかなりのリスクになるし」と目を潤ませるA嬢。一人暮らしの彼女にとって華ちゃんは大事な同居者。もしものことを考えてしまい、自身の体調を崩しかけない状態にまでなってしまったのだ。私も、シャンコが舌がんかもしれないと言われた時のことを思い出した。

 結果的に、華ちゃんのシコリは、予防注射後の副作用だったらしく、A嬢は胸をなでおろした。しかし、そんなA嬢の動揺ぶりを見た友人が「いつかはいなくなるんだから。その時のペットロスを考えると心配過ぎる」と、なかば無理矢理、保護猫である風(ふう)ちゃんを持ち込んだ。

 風ちゃんは、この春、3歳になるお嬢ちゃん。無駄鳴きをせず、聞き分けと行儀が良い華ちゃんに比べ「とにかくいつもにゃーにゃー鳴いていますね。高いところが好きで、カーテンレールや家具に上るんですが、炊飯器を踏み台にするんですよ。その度にスイッチが入ってしまって(笑)。要するに、アホなんです~~」、A嬢は目尻を下げる。

 同居開始後、1~2週間は、華ちゃんがナーバスになり落ち着かない様子だったが、今では互いに毛づくろいする間柄。「この前、華ちゃんの耳の後ろから血が出ていて……。風ちゃんが舐めすぎたせいなんですけど、華ちゃんはたいして気にも留めていないみたいでした」
 愛猫がもつれ合って眠る光景は、猫好きにとって憧れだ。

 どっちが先にA嬢のベッドにもぐりこむか、それは風ちゃんにとって大事なこと。華ちゃんが自分のベッドで寝ている時は問題ないが、自分より先にA嬢のベッドに居ようものなら嫉妬心丸出しで、ひたすら鳴いて文句をつける。もっとも、華ちゃんは泰然自若。「風ちゃんの行動パターンは、小学校低学年レベルと思えばわかりやすいです」

 日中は寝ている時間が長かった華ちゃんは、風ちゃんが来てから目に見えて元気になった。一緒に走り回ることも増えた。「多頭飼いなんて、以前は想像もしていませんでしたが、私にとっても、華ちゃん&風ちゃんにとっても良かったと今は思っています。友人のお節介に感謝ですね」。
A嬢にとって、華ちゃんと風ちゃんは、大笑いを呼ぶ存在。


カメラマンB氏と暮らすはーちゃん
 はーちゃんは、シュッとしたロシアンブルーの男の子。「あまりにイケメンなその風貌に一目ぼれした」のだと、B氏は振り返る。本名はハンサム君。転じて、はーちゃんと呼んでいる。
 家を長期間空けることも多い、一人暮らしのB氏。はーちゃんお気に入りの部屋にはエアコンをかけ、快適に過ごせるような環境を整えている。「今度、出張で1週間ぐらい留守にするから、ペットシッターを頼もうと思っている」。男同士のおしゃれな暮らしが透けて見える。

 冬の初め、私が猫用コタツを買ったと話した際、「うちも買おうかな」と言っていたが、スタイリッシュな住まいにはやや不似合いだったのだろう。B氏がはーちゃんのために購入したのは、「マザーボール」という商品。身体の重みで沈み込むようになっているふわふわのクッションで、母親に抱かれている心地になれるのだとか。撮影を終えて帰宅した後、マザーボールの上でまどろむはーちゃんを見ながら、冷えたビールを飲むのがB氏の日課だ。

「もし、はーちゃんが病気にでもなったら、と思うと……。いや、考えたくない」と漏らす溺愛ぶり。定期的に健康診断を受けさせている。
 普段はカッコ良い売れっ子カメラマンだけど、ナイーブなB氏にとって、はーちゃんは精神安定剤。

ライターC嬢と暮らす、ニャースこと弥助
 幼い頃から、犬や猫と共に暮らしてきたC嬢。ある日、一匹の猫ちゃんが23年の天寿を全うした。人生の大部分を過ごした家族だけに、C嬢はペットロス状態になってしまう。約2年はそんな状態が続いたが、実母がエイズに罹っていた公園猫を保護。5年にわたって、共に面倒を看るうち、少しずつ気持ちが癒されていった。

 今から1年前のこと。友人が自宅裏に建つ空き家の庭で、数匹の子猫が暮らしているのを発見する。近所の人たちがエサを与えて見守っていたのだが、その“猫のパラダイス”でとんでもない事件が起きた。生後5~6か月の子猫があろうことか妊娠してしまったのだ。しかもきょうだい同士で……。
(※ちなみに、猫は生後4か月ごろから妊娠可能になる個体も珍しくはない。きょうだい間も、同様に良くある)
 このまま放置したのではトンでもないことになると、友人たちは捕獲を開始。C嬢はそのうちの1匹、若くしてパパになった弥助を家族として迎える決意をする。

 空き地で兄弟と自由気ままに過ごしてきた弥助にとって、C嬢のマンションでの暮らしは恐怖に近かっただろう。毎日毎日、「悲鳴に近いような叫び声を常にあげとった。いつ、近所から苦情が来るかと、こっちもビクビクもんやったわ~」、C嬢は当時を思い出す。近づこうとするとシャーと威嚇。その頃のC嬢は生傷が絶えなかった。「毎日、流血」だったのだ。

 でもC嬢はあきらめない。大量のオモチャを次々買ってきては、「遊ぼ、遊ぼ」と根気よく弥助を誘ったのである。2ヶ月ぐらいが経った頃から、「この人は危害を加える人じゃなく、遊んでくれる人、って認識したんやろうね」。手からご飯を食べるようになった。今では常に後ろをついてくる。「もうベタベタ(笑)仕事中も遊んで~遊んで~攻撃が止まなくて…。ホンマに大変!」
 言葉とは裏腹に、その口調はメロメロだ。と、書いている私の膝の上にもシャンコが居座っていて“撫でて撫でて攻撃”の真っ最中。ホンマに邪魔なんだから(笑)。

 シャム系のミックス、青い瞳を持つ弥助(普段はニャースと呼ばれている)は、空き地生まれにも関わらず、大変なグルメだ。C嬢がフード専門のライターなので、当然なのかもしれないが、まさに“氏より育ち”を地で行っている。お買い得フードには目もくれないため、お気に入りを見つけるまで、オモチャ同様あらゆるフードを試してみた。結果、たどり着いたのは、穀物フリー、500グラム1,080円のブランドフード。ビーフ味は嫌い。チキン味専門だ。
 ホント、なんやかんやでお金かかるよね~~、と苦労話で盛り上がる。

 野性味は完全に消えたわけではない。なかなかツメを切らせてくれないのが、目下の悩み。熟睡している間に1本だけ切っている。「一回一本しか切れへんねん」。口調はまたもメロメロだ。
 面倒見の良い姐御・C嬢にとって、弥助は目の中に入れても痛くない、愛い奴。

 今回はワタシの出番は無いのね。
 悔しいから、明子さんの椅子を占拠しちゃおう。

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かぞくのカタチ

小林明子
ライター

1962年京都市生まれ。同志社大学在学中からミニコミ誌の制作を始めて以降、ライター稼業まっしぐら。雑誌『あまから手帖』の連載ほか、『文藝春秋』『家庭画報』などに執筆。著書に、生家である白生地問屋での少女時代を綴った昭和の風景満載のコミックエッセイ『せやし だし巻 京そだち』(原作/140B)がある。

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