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COLUMN コラム

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いごごちのカタチ

わが家のいとしい残像

平野 愛

平野 愛(写真家)
その日の記憶を文字だけでなく写真と一緒に残せたらどれだけ素敵だろうか。
身の回りの「残像」を積み重ねていく楽しさを書きとめていきます。

いごごちのカタチ

わが家のいとしい残像

第15回 事務所の移転、わが家は中継地点

 今年のわが家のベランダでは、こどもが自然塾でもらってきた大阪・南千里生まれの「クワガタ」が暮らしている。以前はカブトムシだったが(第7回コラム参照)、今はクワガタと一緒だ。梅雨らしくない6月をくぐりぬけ、7月。あっという間に夏が来た。長生きしてほしい。こちらは目下事務所移転のため、引っ越し、改装、DIYにまつわる日々でいっぱいいっぱいである。

 事務所移転計画が決まったのは1か月前の5月末。これまでも「職住接近」をテーマに自宅と事務所は近めだったが、さらに接近させることにすると、1週間後にはよい物件に出会った。6月末には移転完了とするべく、なるべく自分たちの手で引っ越しや改装などをすることに。
 そこで、9年半ほどいた旧事務所にギリギリまでいては引っ越しが追いつかないため、早めに什器や機材や書類などを運び出すことになった。その仮置き場として、また、移動の中継点として活躍したのが自宅玄関の土間空間だった。

余白の玄関土間

スタッフとともに什器を運び入れている

ここからさらに物が詰め込まれていく

 自宅マンションの玄関部分を一部土間化しておいたことを心底よかったと思った。もともとはこどもの自転車や自分の写真機材などをドカドカと置いておく空間として使っているのだけれど、このなんでもない余白がこんなに活躍する日が来るとは思いもよらなかった。

 テトリスのように什器などを積み上げ、わずかに隙間も残して奥の戸棚へも到着できるように工夫した。エアコンも取り付けていたので、雨の日のジメジメも除湿機能ですっきり。そして何より、中継地点に物を入れることによって、いるものいらないものの選別が研ぎすまされてすっきり。

 これでまず3分の1の中間移動が完了した。では、新事務所への移転までのあと2週間どこで仕事をするかであるが、なるべく新事務所に近い場所で改装しながら仕事をしたいため、オフィス部分はごっそり自宅の食卓空間へと運び入れることにした。もともと同じ机を三台並べていたこともあり(第10回コラム参照)、並んで仕事することには無理はなかった。

 ただし、こどもへのストレス、自宅というプライベート空間に長時間いるスタッフへのストレスが、なるべくないようには意識を向けた。些細なことだけれど、朝から十分に換気をしておくとか、おもちゃが散乱していないようにとか、こどもにはTV消して!とか、うるさい!とか、バタバタしない!とか言わないようにしておいた。なるべくいつも通りにさせていられたことで、こども側は大丈夫だったように思う。

 スタッフ側は、おそらくいろいろ気遣いながらがんばってくれていたに違いない。が、かれらもなにかと面白がれる人材なので、こちらもあまり気にしないようにさせてもらったのだった。

奥がダイニング。黙々と仕事をするスタッフ。手前がリビング。悠々と寛ぐこども

 これで3分の2の中間移動が完了した。残すは3分の1。これは旧事務所近くに借りている3畳ほどの倉庫に入れている大量の現像済みフィルムや映像機材、資料の数々。3畳分とはいえ、ギチギチにそびえ立つほどの量なので、もうこれ以上自宅に仮置きすると生活できないと判断。借りたまましばらく保管しておくことにした。土間、ダイニング、倉庫。この3空間の存在によって、なんとかこの自前引っ越しができているということになる。

 そうこうしている間に、新事務所となる築45年のレトロビルの一室の契約が無事に済み、オーナーの理解も得て改装スタート。多忙を極める知り合いの設計事務所のチームに、無理を承知でこの状況を伝えると、本仕事の合間を縫って来てくれては、天井を抜いて電気回路を整えてくれた。

 汚れていた壁のクロスは自分たちでも剥がし、ペンキ塗りもDIY。なぜか力を貸してくれる人が、次から次へとやってきてくれるという日々。慣れないホームセンターに付き添ってくれる人も居れば、仕事終わりに、仕事途中に(!?)、休日にと、立ち寄ってくれるご近所のもの作りチーム。彼らの力強さと柔軟さ、それからやっぱり面白がれる力に感激した。むしろ、完成していくのが淋しいくらい。

天井を抜いて、27cm高くしてもらった。みなで一休みして眺めているところ



DIYは準備が7割。友人たちの助けなしにはここまで来られなかった

 さてと、淋しいけれど作業に戻ろう。

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いごごちのカタチ

平野 愛
写真家

1978年京都生まれ京都育ち。写真家。17歳よりフィルムカメラと過ごす。『東京R不動産』(アスペクト)の撮影をきっかけに、雑誌『キョースマ!』(淡交社)で住まいの写真を多数手がけるほか、4年にわたり神戸女学院大学の大学案内を撮影。近年は雑誌『Number』でスポーツ選手のポートレイト撮影をはじめ、ウェブマガジン『OURS. KARIGURASHI MAGAZINE』、書籍『#カリグラシ 賃貸と団地、貸し借りのニュー哲学』など住まいにまつわる編集も。大阪在住。ウェブディレクターの夫と息子との3人暮らし。

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