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江 弘毅

江 弘毅/編集者

住まいと街の健全な「交通」が行われてこそ人がハッピーになる、 という街的生活者の住生活充実コラム。今日も「ごきげんなネタ」てんこ盛りで。

第20回 家の料理、外の料理

 どう逆立ちして家でつくっても、絶対に外の店の方がおいしい料理がある。そう思う。そしてそれはデミグラス系の洋食ときつねうどん。そんな話で仲間の街ネタ編集者と盛り上がって、「家の味と店の味」ということを考える。

 わたしはこの連載でも何回かご披露しているが、40年前の旧いキッチンを新しくしたこともあって、家で料理をすることが多くなった。
 とくにトンカツやカキフライといった揚げものは、油の温度さえ正確で安定してさえすれば、結構おいしくつくれる(といっても天ぷらは難しいが)。新しく導入したガスレンジは温度を160℃や180℃と設定して、火加減は自動でおまかせすることができるのでとても便利だ。

ミラノ風カツレツは白ワインのおかわりを呼ぶ
ミラノ風カツレツは白ワインのおかわりを呼ぶ

 トンカツやビフカツはもちろん、牛肉赤身を肉叩きで薄く叩いて卵とパルミジャーノをつけて揚げ焼きするミラノ風カツレツをつくったり、アジの南蛮漬けを揚げると焼く(これもグリルの自動でオッケー)を両方同時にやって食べ比べる、などもやったりするが、スーパーやデパ地下に行けば、有名な肉屋さんのミンチカツや串カツ屋の串カツがいわゆる「生」で売っていて、持って帰って揚げると、店顔負けのおかずや酒肴になったりする。

南蛮漬けの酸味がたまらない季節になった
南蛮漬けの酸味がたまらない季節になった

 ガスオーブンもレンジの下に一体型として装備されていて、マカロニグラタンからぎゅうぎゅう焼きまでいろいろやったが、パエリアが一番よくつくる料理になっている。
 パエリアの具はアサリ、イカ、エビの魚介類と鶏肉に落ち着いている。良いサフランを使ってサフラン水をつくることと水加減さえ間違わなかったら、かなりイケる(自信あり)。

 パエリアは白ワインに合う。前半戦は具にレモンを搾って食べて飲んで、後半戦は魚介や鶏のダシがよく利いたサフラン・ライスで飲む。また違った飲み方が出来る絶好の酒肴でありご飯である。
 そう考えると、自分にとっての家での理想の料理は、ご飯のおかず的なメニューではなく「食べながらイケる(飲める)」アイテムとなる。そういう意味ではてっちりやすき焼きなど鍋料理も、店に負けず劣らず家でうまい料理だ(安くつくし)。

赤と緑に、黄やオレンジが混ざったりと、匂いも彩りもエースで四番だ
赤と緑に、黄やオレンジが混ざったりと、匂いも彩りもエースで四番だ

 一度、業務用テーブル形のお好み焼きの鉄板を持っている友人に招かれて食べたが、これも街場のお好み焼き屋でどういうふうに焼けばおいしいのかを見て知ってる関西人がやれば、それこそ店よりうまいお好み焼きが実現する。
 これらではそこそこのスーパーへ行けば、お好み焼きや焼きそばソースが「地ソース」まで揃っていて、あれこれ食べ比べできるぐらいだ。

 そう考えると外食は、フランス料理や鮨という「ご馳走系」を除くと、うどんやそば、ラーメンといった麺類、あるいはオムライスやハヤシライスやデミグラスソース系の洋食こそが至宝なのだと分かる。

洋食屋でデミグラスソースの旨さを知るほどに、難しいと引いてしまうが
洋食屋でデミグラスソースの旨さを知るほどに、難しいと引いてしまうが

 そうか、麺類なら店の麵やダシ、スープ、洋食ならキャベツの千切りの技術……と思い浮かべると、和・洋・中で共通する絶対家では出来ないもの、それは和のダシ、洋のブイヨン、中華のスープなのであった。

 とりわけ料理に興味を持ってくると、味噌汁をつくったりする時に、顆粒や濃縮の即席ダシを今日はやめて、鰹節やいりこ(ティーバッグみたいな市販のものもある)でダシをとって……などなどを実行したりする。
 これはこれで、やっぱりというかなかなかうまく出来る。

 が、うどんになれば全くダメ。鯖節、メジカ節、ウルメ節に本鰹……。うどん玉はデパ地下のいっちゃんエエやつ、醤油や味醂にもそらこだわるでぇ……。きつねうどんやし揚げも炊いたろか……、と、京都の巨匠料理人のレシピ本片手にやってみても、必ず「男の趣味の料理」で終わってしまう。

「黄金のダシ」の誘惑はやはり絶ちがたい……
「黄金のダシ」の誘惑はやはり絶ちがたい……

「これやったら、駅前の立ち食いそばの方がうまいんちゃうか」
 なのである。難しいのである。

 自分と家族のせいぜい4食分、デパートに行くまでかかった費用と労力、鍋を何個出してまたザルやボウルや、それの後片付けなど考えるまでも、やっぱりおいしくない。はじめからやめておきましょう。

とくに素人のカレーうどんなんて、「憤死」のもとである
とくにカレーうどんは絶対、プロ中のプロの領域だ(写真は[うさみ亭マツバヤ])。素人が手を出すと「憤死」のもとである

 ラーメンの鶏ガラから取る白湯スープもそうだし、ドミソースともなれば、1日かけてフォン・ド・ボーを取って、炒めたルウを合わせて、ことこと煮込むこと半日、それを漉して……。
 だから「フォン・ド・ボー ディナー ビーフシチュー」という名前のそれがS&Bから出てるっちゅうんです。

 それでも、うまいうどんと蕎麦、デミソースのビフカツを食べたいがために、またまた思い出したようにトライしてしまう。

 かくのごとく「はじめからやめておきましょう」は、いつもつくり終わった事後的な教訓になる。実は一番楽しいのは、すね肉、ニンジン、タマネギ、香味野菜、スパイス……といった材料を買ってきて、キッチンに並べることだったのだ。

「あの店で食べた時ビフカツとソース」は脳裏に残っているのだが……
「あの時[グリルミヤコ]で食べたビフカツとソース」は脳裏に残っているのだが……

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