Research

研究データから紐解く、 上手な「近居」家族の始め方

実際、近居ってどうなの?

前回、居住環境学をご専門とする大阪市立大学 小伊藤亜希子教授に、新しい住まいのあり方として、親世帯と子世帯がちょいど良い距離感で暮らす「近居」についてお話を伺いました。


今回の記事では、「実際、近居ってどうなの?」という疑問を解決すべく、近居をしている親世帯・子世帯を対象にしたアンケート調査やインタビューを通して、そのリアルな実態を紐解いていきましょう。

「近居」とは、親世帯と子世帯がほどよい近さの距離感で暮らす住まい方のことで、「同居」や「別居」と同じカテゴリーの言葉です。


“ 徒歩◯分以内” といった数値が決まっている訳ではありませんが、親世帯と子世帯それぞれの住まいが比較的近くにあり、場合によっては暮らしの一部を一緒にしたり助け合ったりできるような距離感です。
近年では、夫婦共働きの家庭も多くなり、「夫婦だけでは、子育ての手が足りない」ときなど、親世帯に助けを求めることも多く、その需要は高まっています。


では実際、どのような流れで「近居」はスタートするのでしょう。


どちらともなく始まる「近居」

近居の始まりは、親世帯と子世帯のどちらかが提案したのではなく、自然な流れで近くに住むようになったケースがほとんどでした。 

近居の親子世帯のライフスタイル調査(2019年/大阪市立大学・積水ハウス n=1229)


世帯ごとにヒアリングをしてみると、近居が始まったきっかけが、子世帯の妊娠・出産時に子世帯が親世帯に近寄っていくことで始まるケースも見られました。

近居を選んだ理由としては、その半数近くが「家族が近くに住む安心感」と答えており、その他では「子どもや孫のサポート」「親世代の老後を見据えて」など、お互いの家庭を助け合うような理由が上位を占めています。

近居の親子世帯のライフスタイル調査(2019年/大阪市立大学・積水ハウス n=1229)


しかし、その一方で、同居ではなく近居を選んだ理由では、「プライバシーの尊重」「気を遣いたくない」「生活リズムの違い」など、それぞれの暮らしを大切にする意見もありました。
お互いのプライバシーを大切にしながら、お互いを助け合える関係を考えた先にある答えが「近居」という暮らし方なのかもしれません。

近居の親子世帯のライフスタイル調査(2019年/大阪市立大学・積水ハウス n=1229)


今回の調査では、小さな子どもがいる子世帯が対象のため、親世帯の年齢層もそれほど高くなく、健康面の不安を抱えた人が少なかったこともあり、子世帯側が親世帯をサポートするために近居を始めたというケースは全体としてごく少数でした。

では、親世帯から子世帯に対して、どのようなサポートが行われているのでしょうか。


サポートの中心は、親による子育て支援

調査結果では、全体の約7割で、子世帯が親世帯から何らかのサポートを受けていました。
その内容は「子どもの預かり」「子守り」「食事の支度」など子育てに関するサポートが多く、サポートを受ける場所は、子世帯ではなく、親世帯の家で受けることが多いようです。

近居の親子世帯のライフスタイル調査(2019年/大阪市立大学・積水ハウス n=614、複数回答)


交流の場の中心が、親世帯の家になっているのは、子世帯の家に、大人数が集まれるほどのスペースがない場合が多いことが考えられ、「子世帯の家のことに口出ししたくない」と子世帯に対して気遣う声も聞かれました。


また、近居をしている場合、親世帯の家で食卓を囲むことも少なくありません。時には、複数の子世帯が集まることもあるため、広いリビング・ダイニングが必要になります。リビング・ダイニングにつながる和室があると、子どもが遊ぶ場所と大人同士がおしゃべりする場所が緩やかに分離されるなど、さらに便利です。


ただし、リビング・ダイニングに十分な広さがある場合でも、キッチンが狭く、複数の人が一緒に調理や片付けをするのが難しいというケースも見られます。このようなケースも含め、親世帯、それも妻ひとりで3世代分の食事の支度と後片付けをする事例もあり、食事が頻繁になればなるほど親にとって負担となっていると考えられます。
また、子世帯が訪れた時の食費など、親世帯の経済的な負担も少なくないのが現実です。親は嫌だとは思っていないが、今以上のサポートは難しいと感じているケースも多いようです。


時間距離で違ってくる「近居」スタイル

では、少し目線を変えて、世帯間の「時間距離(実際の家の間の距離ではなく、移動手段に関わらず、行き来するのに要する時間のこと)」による近居のあり方の違いをみてみましょう。

調査によると時間距離が短いほど、お互いの行き来が活発になり、特に時間距離15分以内に住む近居家族では、その頻度が目立って高い傾向があることがわかりました。

近居の親子世帯のライフスタイル調査(2019年/大阪市立大学・積水ハウス n=1229)


さらに、行き来の頻度と近居に関する満足度の関係では、親世帯か子世帯か、どちらの訪問かにかかわらず、月2〜3回以上の行き来があると答えた人の満足度が高くなっており、時間距離との関係では、時間距離が短くなるほど、満足度が高くなっています。

近居の親子世帯のライフスタイル調査(2019年/大阪市立大学・積水ハウス n=1229)

近居の親子世帯のライフスタイル調査(2019年/大阪市立大学・積水ハウス n=1229)


気軽に行き来ができる距離に近居することは、親世帯にとっては、孫と顔を合わせて会話する機会が増え、活気に満ちた生活を送ることができます。また、子世帯にとっては、子育てをサポートしてもらえるだけでなく、親世帯の日常生活を見守ることができることが、安心につながっているのかもしれません。


家族みんなで住まい方や距離感を考えよう

近居のいちばんのメリットは、親世帯、子世帯のそれぞれの生活のなかで何を共有・サポートするかを選べることです。しかし、さまざまな状況により、誰もがすぐに近居ができるようになる訳ではありません。
大切なのは、ライフステージやその時々の状況によって変わっていく自分たちの生活にとって、どのような親世帯、子世帯のつながり方をしたいのか、ということです。そんな自分たちにマッチした住まい方や距離感について、あらためて家族みんなで考えてみてはいかがでしょうか。

  • 本記事は、平成29年度からの3年間に、文部科学省「ダイバーシティ研究環境実現イニシアティブ(牽引型)」連携型共同研究助成を受けて実施した、 大阪市立大学大学院生活科学研究科の小伊藤亜希子教授の研究室と積水ハウス住生活研究所との共同研究(Women's Unit by Sekisuihouse & OsakaCityUniversity=WUSO)によって得られたデータをもとにして作成したものであり、令和2年度における同共同研究の成果物の一部です。

    編集:太田 孟(合同会社バンクトゥ)
    取材・文:清塚あきこ

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